武陵蛮(読み)ぶりょうばん(英語表記)Wǔ líng mán

改訂新版 世界大百科事典 「武陵蛮」の意味・わかりやすい解説

武陵蛮 (ぶりょうばん)
Wǔ líng mán

中国古代に,今の湖南・湖北両省を中心に居住していた非漢民族。その名称は漢代に当地に設けられた武陵郡にもとづく。名犬槃瓠ばんこ)の子孫といい,椎髻(ついけい)(あげまき)あるいは断髪の習をもつ。渓谷ごとに多くの部族に分かれ,酋長(精夫)に統率された。漢人入植が進んだ1世紀以降に活動が活発化し,しばしば道教系の反乱ともつながりをもった。後漢以降の各王朝は,武力弾圧を加える一方で酋長の分封,漢人より軽い租税(賨布(そうふ))で懐柔につとめた。とくに南朝宋の積極策が成功し,南朝末には漢民族との同化を終えた。陶潜(淵明)は武陵蛮の血をひき,《桃花源記》はその聚落生活をモデルとした作品であるとの説がある。
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