断髪(読み)ダンパツ

デジタル大辞泉 「断髪」の意味・読み・例文・類語

だん‐ぱつ【断髪】

[名](スル)
髪を切ること。長髪を短く刈ったり、まげを切り落としたりすること。
髪を首筋のあたりで切りそろえた女性髪形。昭和初期に流行。ボブスタイル。

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精選版 日本国語大辞典 「断髪」の意味・読み・例文・類語

だん‐ぱつ【断髪】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 髪を短くきること。髷(まげ)を落として髪を切りさげたままにしておくこと。また、その髪形。散髪。ざんぎり。
    1. [初出の実例]「若夫出家断髪者、亦以堅甲利兵相誇、而廃其本業也」(出典:東海一漚集(1375頃)三・原民篇)
    2. 「断髪の男子に逢てこれを文明の人と云ふ可きや」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)
    3. [その他の文献]〔春秋左伝‐哀公七年〕
  3. 女性の髪形の一つ。第一次世界大戦頃に西欧から日本にはいってきて流行した形で、髪を首筋のあたりで切りそろえたものや、後頭部を刈り上げにしたものなどがある。
    1. [初出の実例]「すると向かうから断髪(ダンパツ)にした女が」(出典:歯車(1927)〈芥川龍之介〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「断髪」の意味・わかりやすい解説

断髪 (だんぱつ)

結い上げたり結んだりせず短く切ったままの髪をいう。日本では男女ともに古くから結髪の風習があり,平安時代垂髪にしても長いままの髪で,短く切ることはなかった。〈髪をおろす〉という言葉や,髪を切るといわず断つというのは,男女ともに俗世との縁を断つことであった。断髪の風習は西洋風俗に触れた幕末以降で,1871年(明治4)の〈断髪脱刀勝手令〉でいわゆる丁髷(ちよんまげ)から断髪にする者が多くなり,散切(ざんぎり)頭と呼ばれ文明開化象徴となった。女性の断髪は,ヨーロッパで第1次世界大戦の従軍看護婦が衛生上断髪したことに始まり,やがて一般女性に広まった。日本では大正末期に一部の女性が断髪を始めたが,洋装が定着しないこともあり流行しなかった。しかし昭和に入ってスカート丈も短くなり洋装が普及すると,軽快な断髪が若い女性に受けた。美容界でも技術がすすみ,顔の形や背丈に合わせたスタイルが種々考えられた。なかでも男性と同じように後頭部を刈り上げた髪形をシングルカットと呼び,昭和初期のモダン・ガールの風俗として一部にではあるが流行した。
髪形
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「断髪」の意味・わかりやすい解説

断髪
だんぱつ

大正から昭和初期にかけて、男女間に流行したおかっぱの髪形。とくに女性でも職業婦人の間に普及した。わが国の日本髪は、西洋文化を取り入れてから、生活一般にわたっていろいろの変化をもたらし、とくに女性の間では衣服改良、結髪改良の波が押し寄せ、封建社会的な日常生活に新風を巻き起こした。それが第一次世界大戦での女子の従軍などから欧米でも従来の髪形が問題となり、断髪の発生となった。ことに戦後、生活合理化運動がおこって、軽快な断髪運動が普及し、それがわが国にも波及して、洋装に断髪姿が取り入れられた。ことに近代的女性をモダン・ガールと称し、これをもじって毛断嬢といったりした。東京では銀座を中心とするダンサー、女給たちの間から広がり、昭和初期から働く女性の髪形となり、一般家庭では子供たちにも広がった。断髪にも後ろを刈り上げたり、周囲を平均に剃(そ)り上げたりした形もある。また男子の間でも画家、画学生、芸能人たちに用いられた。

[遠藤 武]

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百科事典マイペディア 「断髪」の意味・わかりやすい解説

断髪【だんぱつ】

短く切ったままの髪のこと,また髷に結った髪を切ること。日本では古来髪を結いあげ,あるいは長く垂らしていて,短く切ることはなかった。男女を問わず髪を断つことは俗世との縁を断つことであり,断髪は出家や刑罰としての見せしめを意味することもあった。外交上の理由から施行された1871年(明治4年)の散髪脱刀令により従来の丁髷(ちょんまげ)から断髪にする者が多く,散切(ざんぎり)頭は文明開化の象徴とされた。 女性の断髪は西欧でも第1次世界大戦以後のことで,日本では洋装の普及に伴い昭和初期モダン・ガールのスタイルとして一部に流行した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「断髪」の意味・わかりやすい解説

断髪
だんぱつ

髪型の一種。歴史的には明治初期の,丁髷 (ちょんまげ) を結っていた長い髪を短く切ること。男性の断髪 (散髪ともいう) 許可は廃刀とともに明治4 (1871) 年に,また女性の断髪禁止は翌年に発令されている。他方,断髪は 1920~30年代にかけて流行した女性のボブヘア bobbedhair (単にボブ bobともいう) をもいう。少女の髪型としてのおかっぱから,少年のように後頭部を刈上げた髪型までさまざまであるが,フランスのデザイナー,P.ポアレのマヌカンたちや舞踊家 I.ダンカンの踊り子たちなどから急速に流行するようになった。

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普及版 字通 「断髪」の読み・字形・画数・意味

【断髪】だんぱつ

髪を切る。

字通「断」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の断髪の言及

【哀悼傷身】より

…その方法としては歯を抜く(ポリネシア,中国のケラオ族),指を切り落とす(ニューギニア,メラネシア,ポリネシア)などの例もあるが,世界的に広く分布しているのは,顔や身体に傷をつけることや,髪を切ることであって,ユーラシア,アメリカ,アフリカ,オセアニアに広がっていた。断髪は一般的に言って傷身の緩和された形式と言えよう。哀悼傷身はユーラシアとポリネシアでは王侯や夫の死に際し,臣下や妻が行い,殉死の代用的な性格が強いが,南アメリカでは階級分化のみられない未開農耕民や狩猟民が行っていて,浄めの機能をもつといわれる。…

【お河童】より

…江戸時代の切禿(きりかむろ),それ以前の〈めざし〉〈わらわ〉など幼女向きの髪形の変形で,これらよりさらに短くしたものである。おとなのお河童は断髪といわれ,第1次大戦中~戦後と欧米で流行した。それが昭和初期に日本の若い女性の間にとりいれられ,〈モダンガール〉の誕生をみた。…

※「断髪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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