火事羽織(読み)カジバオリ

デジタル大辞泉 「火事羽織」の意味・読み・例文・類語

かじ‐ばおり〔クワジ‐〕【火事羽織】

江戸時代火事装束に用いた羽織武家のは革・羅紗ラシャ製の身丈が短めの打裂ぶっさき羽織で、前後5か所に定紋をつけた。火消しのは普通の羽織と同じ形で、紺無地の木綿刺し子あわせ仕立てにし、背や襟に所属の組印や組名を染め抜いた。

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精選版 日本国語大辞典 「火事羽織」の意味・読み・例文・類語

かじ‐ばおり クヮジ‥【火事羽織】

〘名〙 江戸時代の火事装束の羽織。武士のものは、くすべ皮、羅紗、科(しな)などで陣羽織のように作り、定紋をつけた。町人のものは紺のもめんに組や職名白抜きにした筒袖羽織のように仕立てた。《季・冬》
洒落本・客衆肝照子(1786)喜七「出なめし皮のぱっち火事はおりの形(なり)

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世界大百科事典(旧版)内の火事羽織の言及

【羽織】より

陣羽織ともいったこの袖無羽織は南蛮服の影響をうけ,当時舶来の金襴(きんらん),緞子(どんす),ラシャ(羅紗)などの高級織物で仕立て武将が愛用した。江戸時代には種類が非常に多く,袖丈よりも羽織丈の短い若衆の蝙蝠(かわほり)羽織,市井の老人が着た袖無羽織(甚兵衛羽織),袖丈と袖口が同寸の広袖羽織,腰に差した刀や馬に乗る武士のための腰から下が割れている背割(せわれ)羽織(打裂(ぶつさき)羽織),防火用として大名などが着たラシャや革製の火事羽織,幕末の洋式訓練に用いた筒袖羽織など,用途や身分によって形態や地質などさまざまであった。羽織は一時的に衣服の上に着るところから略装として扱われ,上級者は正式の場には用いず,御目見(おめみえ)以下の武士が肩衣(かたぎぬ)の代りに着た。…

※「火事羽織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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