改訂新版 世界大百科事典 「アエギディウスロマヌス」の意味・わかりやすい解説
アエギディウス・ロマヌス
Aegidius Romanus
生没年:1247ころ-1316
神学者,政治理論家。ローマで生まれ,アウグスティヌス修道会に入り,パリ大学ではトマス・アクイナスの講義に出席。その学説の一部にトマスの影響が認められるが,トマス学派には属さない。大学当局と衝突して数年間修学を中断して後,パリ大学神学部教授となり,1292年修道会総長になるまで教える。彼は有限的事物における〈存在〉と〈本質〉の区別を説いたトマスの立場を支持し,この区別を〈物と物との間〉に存在する実在的区別にまで高めた。この問題をめぐるガンのヘンリクスとの論争は哲学史上有名。政治理論に関しては,アエギディウスは教会と国家との関係をめぐって,霊的権力と世俗的権力という二つの剣はそれぞれ教皇と世俗君主に属するとしながらも,世俗的権力は霊的権力に従属し,後者によってさばかれると説いて,教皇は直接に世俗的権力を行使しないが,世俗的事柄に関しても至上権を有すると主張した。
執筆者:稲垣 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報