日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカエフ」の意味・わかりやすい解説
アカエフ
あかえふ
Аскар Акаев/Askar Akaev
(1944― )
キルギスの政治家。同国ケミン区カズィル・バイラク村生まれ。キルギス人。カザフスタン大統領ナザルバエフと並ぶ、中央アジアの改革派指導者であった。レニングラード精密・光学機械大卒。物理学者であり、共和国科学アカデミー総裁を経て、1990年10月に共和国最高会議で、旧ソ連初の非共産党員指導者として大統領に選出された。1991年10月に再選されたが、1995年12月の繰上げ大統領選挙で圧勝して、大統領の任期を5年に延ばした。山間に閉ざされた内陸の小国キルギスは、他の中央アジア諸国に豊富な石油、天然ガスなど目だった資源はない。このためアカエフは、旧ソ連諸国でいち早く国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐ一方、欧米諸国や日本の援助、指導による市場経済化の道を歩んだ。日本から田中哲二日本銀行監査役を大統領顧問に招き、通貨改革を断行した。2000年に3選を果たす。政権が長期化するにつれて独裁色を強め、汚職の蔓延(まんえん)や野党弾圧、報道統制などに国内外からの批判を浴びた。2005年2月から3月にかけて行われた議会選挙では与党が勝利したが、選挙結果を不満とした野党側の訴えをきっかけに大規模な反政府運動がおこった。2005年3月24日に首都ビシュケクを反政府勢力に占拠され、アカエフはロシアへ亡命、4月5日大統領を辞職した。
[白井久也]