改訂新版 世界大百科事典 「アカコウモリ」の意味・わかりやすい解説
アカコウモリ
Lasiurus borealis
英名には体色を表すred batや生息環境を表すtree batなどがある。産子数が翼手類中もっとも多く,雄が美しい橙赤色の翼手目ヒナコウモリ科の哺乳類。カナダ南部から南アメリカまで広く分布し,森林に生息する。体長5~7cm,前腕長3.5~4.5cm,体重8~13g。耳介の先は丸くて,比較的短く,翼が細長く,尾が長い。腿間膜(たいかんまく)の上面にも長毛が生える。多くのコウモリと違って,雌雄で毛色が異なり,雄の体背面は美しい橙赤色か赤褐色,雌のそれは淡黄灰褐色。雌雄とも毛の先端は白く,霜降り状。日中は低木林にすみ,単独か,または幼獣を伴った雌が,地上1~5mほどの比較的低い樹葉や枝にぶら下がっているが,ごくまれに成獣が2頭でいることもある。日没の15~30分後,ねぐらを離れ,高空を時速64kmほどで飛翔(ひしよう)しながらガ,アリ,甲虫などを捕食する。ときに樹葉の上の昆虫をとらえる。交尾期は8~9月,出産期は5月末から6月末。1産3~4子,新生子は0.5g,生後4週間ほどは母親の胸の毛に後足や歯などを使って抱きついているが,4週間ごろの子の体重は4~5gあり,子の総計体重は母親のそれを超える。本種は樹にぶら下がっているため,他の洞窟性のコウモリと異なり,他の動物に捕食されることが多い。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報