改訂新版 世界大百科事典 「アクキガイ」の意味・わかりやすい解説
アクキガイ (悪鬼貝)
Murex troscheli
アッキガイともいう。殻に多くのとげが魚の骨のように生えたアクキガイ科の大型巻貝。殻の高さ17cm,とげを除いた太さ5cmの卵円錐形で下方へ細く長い水管嘴(すいかんし)が伸びる。淡黄色で,細い肋(ろく)は濃褐色で横縞になる。また殻を三分するように120度ごとに太い肋ができ,その上にとげができるが,肩のはとくに長い。殻口は卵円形で,その外縁にも長いとげが5~6本できる。長い水管嘴にも7本の長いとげがあり,その間に短いとげがある。ふたは堅い革質。軟体(肉)の鰓下腺(さいかせん)から出る粘液は日光にさらすと紫に発色する。房総半島以南,西太平洋,インド洋に分布し,水深10~50mの細砂底に埋もれて,水管嘴を突き出してすみ,肉食。ホネガイM.pectenはこの種に似るが,やや小型で,水管嘴上のとげはみな長く,魚の骨のようになる。この両種は殻に長いとげがあるので和歌山県などでは魔よけに門口に飾る風習があった。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報