アフロアメリカ文学(読み)アフロアメリカぶんがく

改訂新版 世界大百科事典 「アフロアメリカ文学」の意味・わかりやすい解説

アフロ・アメリカ文学 (アフロアメリカぶんがく)

アメリカ大陸の黒人や黒人との混血ムラート)の人口が多い地域において,彼らをテーマにして叙述された文学アメリカ合衆国の〈ブラック・ベルト〉も該当地域に入るが,一般に北アメリカのその地帯の黒人問題を取り扱った文学は〈黒人文学〉と呼ばれることが多いので,むしろアフロ・アメリカ文学の呼称対象から除外した方がよい。したがって,主としてカリブ海域やブラジル北東部の黒人・混血の居住地域を対象とした文学の総称とみなすのが妥当であろう。ところで,アフロ・アメリカ文学というジャンルが確立されたのは,1920年代後半から30年代にかけてであり,その歴史はまだ新しい。それ以前の19世紀の奴隷制度の下でもいくつかの黒人をテーマにしたすぐれた文学が生まれているが,そうした文学がジャンルとして確立されたのは,20世紀に入ってからのことである。そしてその背景には,第1次世界大戦後パリを中心にしてアポリネール,ジッド,ピカソ,サンドラルスらが推進した黒人やブラック・アフリカの再認識運動がある。それがまたたくまに全世界に拡大され,米州とくにラテン・アメリカにも波及して,そこでは白人と黒人の知識人によって運動が進められた。それらの運動のいくつかを挙げると,ハイチではジャン・プリス・マールとジャック・ルマンによる《ルビュー・アンディジェーヌRevue Indigène》運動(1926-27),マルティニクではエメ・セゼールによる〈ネグリチュード〉運動,キューバではアレホ・カルペンティエル,ニコラス・ギリェンらによる〈ネグリスモ〉運動,ブラジルではジルベルトフレイレやジョルジェ・アマドらによる〈北東部文学〉運動がある。これらの運動は横の連絡や結合を持っていないが,アフリカ的性格や黒人精神の復興をうたう点では共通性を持ち,全体としてアフロ・アメリカ文学という新しいジャンルを確立したのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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