日本大百科全書(ニッポニカ) 「セゼール」の意味・わかりやすい解説
セゼール
せぜーる
Aimé Césaire
(1913―2008)
西インド諸島マルティニーク島の黒人詩人、政治家。植民地本国フランスの文化を強要され「白人のことばによって思考を飲み込まされた」(サルトル)彼は、1931~1939年のパリ留学時代にアフリカ人サンゴールと出会い、自己の内なる「ネグリチュード」(黒人性)を発見、詩的言語を通してこれを解き放そうとする。長編詩『祖国復帰ノート』(1939)、詩集『奇跡の武器』(1946)、戯曲『コンゴの一季節』(1967)、『Moi, laminaire……』(1982)がある。1945年にマルティニーク島の中心都市フォール・ド・フランスの市長となる。当初は共産党に属し、本国への同化を推進したが、1956年離党、1958年マルティニーク進歩党を結成して以降は自治を旗印とする。2001年まで50年以上にわたり市長を務めた。
[海老坂武]
『マリーズ・コンデ著、三浦信孝編訳『越境するクレオール マリーズ・コンデ講演集』(2001・岩波書店)』▽『エメ・セゼール著、砂野幸稔訳『帰郷ノート 植民地主義論』(平凡社ライブラリー)』