西インド諸島マルティニーク島の黒人詩人、政治家。植民地本国フランスの文化を強要され「白人のことばによって思考を飲み込まされた」(サルトル)彼は、1931~1939年のパリ留学時代にアフリカ人サンゴールと出会い、自己の内なる「ネグリチュード」(黒人性)を発見、詩的言語を通してこれを解き放そうとする。長編詩『祖国復帰ノート』(1939)、詩集『奇跡の武器』(1946)、戯曲『コンゴの一季節』(1967)、『Moi, laminaire……』(1982)がある。1945年にマルティニーク島の中心都市フォール・ド・フランスの市長となる。当初は共産党に属し、本国への同化を推進したが、1956年離党、1958年マルティニーク進歩党を結成して以降は自治を旗印とする。2001年まで50年以上にわたり市長を務めた。
[海老坂武]
『マリーズ・コンデ著、三浦信孝編訳『越境するクレオール マリーズ・コンデ講演集』(2001・岩波書店)』▽『エメ・セゼール著、砂野幸稔訳『帰郷ノート 植民地主義論』(平凡社ライブラリー)』
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…〈黒人がわれわれの辞書にもたらした数少ない寄与の一つ〉(サルトル)であるが,定義は難しい。いずれにしろ,1930年代のパリでセゼール,サンゴールら,フランス領の西インド諸島,アフリカ出身の開化黒人詩人たちが起こした文学運動の思想的・芸術的基盤がこの名で呼ばれる。彼らは,黒人には独特な内的世界,宇宙認識論,芸術創造力,美的感覚などがあるとし,〈アフリカ〉〈ニグロ〉にまつわる過去の汚辱を払拭し,民族的価値の復権,人種の誇りを主張した。…
※「セゼール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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