改訂新版 世界大百科事典 「アブセンティイズム」の意味・わかりやすい解説
アブセンティイズム
absenteeism
労働者が勤務予定日に,無断でまたは正当とは認められぬ事由で大量かつ継続的に欠勤すること,ないしそうした状態をいう。計画的欠勤とか意図的欠勤と訳される。なお,そのような欠勤者がabsenteeである。かかる行動は組織的に行われるのではなく,またその理由,目標が表明されるわけでもなく,この点で労働争議とは異なる。アブセンティイズムは1960年代末から70年代にかけて,とくに欧米先進諸国で大きな社会問題となった。この一つの原因は,完全雇用政策が一定の成果を収め,社会保障制度が整備され,失業と貧困が事実上も労働者の意識の上でも,深刻な問題ではなくなったことである。また,生活水準の大幅な上昇が労働者の価値観,行動様式に影響を及ぼし,さらに生産技術の機械化・自動化,生産組織の官僚化により労働内容が非人間化したため,労働者が労働の中に人間らしさ,働きがいをより強く求めるようになったことも原因の一つである。
執筆者:中村 圭介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報