日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブル・アターヒヤ」の意味・わかりやすい解説
アブル・アターヒヤ
あぶるあたーひや
Abū 'l-‘Atāhiyah
(748―828)
アラブの詩人。イラクに生まれる。教王マフディーをはじめ、ハールーン・アッラシードらと接触して頌詩(しょうし)を捧(ささ)げ、莫大(ばくだい)な援助を受ける。教王マフディーの側女(そばめ)ウトバに恋して愛の詩をつくったが、まったくの片思いに終わり、その絶望から羊の毛の衣をまとった禁欲主義者となったという。世界と人生について思いを巡らしたが、かならずしも伝統的なイスラムの教えどおりには考えず、宗教を忘れた自由思想家と非難された。初期の詩にはさまざまの内容のものがあるが、のちには哲学的色彩が濃くなり、この点でアラブ文学史上独自の位置を占める。
[内記良一]