アマルテイア(読み)あまるていあ(その他表記)Amaltheia

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマルテイア」の意味・わかりやすい解説

アマルテイア
あまるていあ
Amaltheia

ギリシア神話において、クレタ島のイデ山で赤子ゼウスに乳を与えた牝山羊(めすやぎ)、またはニンフ。アマルテイアは、赤子ゼウスを飲み込もうとする父クロノスから彼を守るため、樹葉の陰に彼をかくまって、泣き声が聞こえないようクレテスに大騒ぎをさせたと伝えられる。この山羊は太陽神ヘリオスの子孫で、ティタン神族に恐れられた。ゼウスはのちにティタン神族と戦ったとき、アマルテイアの皮で武具アイギス(「山羊の皮」の意)をつくったという。また、その山羊の角を折ると、それはあらゆる果実に満たされたと伝えられる。これが豊饒(ほうじょう)の角(コルヌ・コピアエ)の由来である。

[小川正広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマルテイア」の意味・わかりやすい解説

アマルテイア
Amaltheia

ギリシア神話で,赤子のゼウスを養育したとされるニンフまたは雌やぎの名。レアによってクレタ島のイダ山中の岩屋の奥で生み落されたゼウスは,ニンフのアマルテイアに雌やぎの乳で養われたとも,アマルテイアはゼウスに乳を与えたこの雌やぎの名であるともいわれる。赤子のゼウスは,あるとき雌やぎと遊んでいるうちにあやまってその角を1本折取ってしまい,これを自分を育ててくれたニンフに,無尽蔵に実りを出す豊穣の角にして与えたという。ゼウスの手に持つ楯アイギスに張られているのはこの雌やぎの皮であるとされる。

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世界大百科事典(旧版)内のアマルテイアの言及

【雲】より

… ギリシア神話では,雲は,最高神ゼウスが持つアイギスという山羊皮の楯によって,自在に集められたり散らされたりする。この〈雲楯〉をゼウスは,彼より前に世界を支配していた神々のティタンたちと戦ったときに,自分がその乳で養われた牝山羊アマルテイアの皮を剝いで造ったといわれる。ゼウスはまたあるとき,彼の妃のヘラに,ゼウスによって天上に住むことを許されていた英雄のイクシオンが恋慕し,人間の身で非道にも神々の女王を犯そうとすると,雲でヘラとそっくりの姿を造り,イクシオンにこの雲ネフェレNephelēを抱かせた。…

【乳】より

…神や英雄や聖人の養育譚に乳が重要な役割を果たすことは多い。ゼウスはクレタ島イデ山の雌ヤギあるいはニンフのアマルテイアの乳で養われた。サンタ・クロースとして広く親しまれる聖ニコラウスは,乳児のころ,キリストがユダに裏切られた水曜日と十字架にかけられた金曜日には,母の乳房を1度しか吸わなかったと,《黄金伝説》には説かれている。…

※「アマルテイア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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