改訂新版 世界大百科事典 「アイギス」の意味・わかりやすい解説
アイギス
aigis
ホメロスの記述によれば,鍛冶の神ヘファイストスがゼウスのために作った魔力をもつ盾のような武器。普通〈山羊皮楯〉と訳されるが,この説には矛盾や異論がある。ゼウスは敵に対して実際には右手で雷霆(らいてい)を投げる天空神であり,アイギスは左手に振りかざす〈雷雲〉の象徴と解釈される。怪物ゴルゴンの首と黄金の総(ふさ)で飾られ,ときにはアテナおよびアポロンに貸し与えられた。この語が造形美術では,もっぱらアテナの外衣として用いられる。鱗状に描かれた皮地の中央にゴルゴンの首を配し,多数の蛇頭の総で飾ったものが普通の造形表現で,胸甲のように両肩から掛けて胸部を被うものと,片肩から袈裟掛けにするものと,2通りの着け方がある。このアイギスのゴルゴンの首の起源には,見る者を石に化すゴルゴン姉妹のメドゥサを殺害したペルセウスの守護神がアテナであったという神話が関係している。
執筆者:福部 信敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報