レア(読み)れあ(英語表記)Rhea

翻訳|Rhea

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レア」の意味・わかりやすい解説

レア(鳥)
れあ
rhea

広義には鳥綱ダチョウ目レア科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Rheidaeには、レアRhea americanaダーウィンレアPterocnemia pennataの2種がある。ダーウィンレアはレアよりやや小形で、背や翼に白い小斑(しょうはん)があり、ペルー南部からマゼラン海峡に至るアンデス山地に分布する。

 種のレアは頭高約1.7メートル、体重約25キログラム。一見ダチョウに似た大形の走鳥類でアメリカダチョウともよばれ、ダチョウよりはずっと小さいが、新世界の鳥のなかではいちばん重い。ダチョウと違って頭頸(とうけい)部やももは羽毛に覆われ、皮膚が裸出していない。翼は退化して小さく、足はじょうぶで、足指は3本ある。全身灰褐色で、雌雄は同色であるが、雄は雌よりすこし大きい。ブラジル東部からアルゼンチン中部までの草原にすむ。食物は草、根、種子などの植物質を主食とし、昆虫類やミミズなどの小動物も食べている。群れで生活し、繁殖期以外は20~30羽(ときには60羽以上)の群れをつくっている。繁殖期になると雄は縄張りテリトリー)を構え、多くの雌の前でディスプレーを行って、雌を獲得する。それから雄は地面に大きなくぼみをつくり、若干の草を敷いて産座とし、交尾した雌をその巣に導く。一つの巣には普通5、6羽の雌が数日置きに1卵ずつ何回か産卵するので、1巣の卵は15~20個またはそれ以上もある。抱卵期間は約40日である。抱卵と育雛(いくすう)は雄の役割で、雛(ひな)は雄について巣を離れる。約5か月で雛は成鳥なみの大きさとなるが、成鳥となるには2~3年かかる。動物園でもよく飼われ、飼育下でも容易に繁殖する。

[森岡弘之]



レア(ギリシア神話の女神)
れあ
Rhea

ギリシア神話の女神。レイアともいう。ウラノスガイアの娘、すなわちティタン神で、弟クロノスと結婚してヘスティアデメテル、ヘラ、ハデスポセイドンゼウスを生んだ。クロノスは、王位をわが子に奪われると預言されたため、レアが生む子を次々と自分の腹の中に飲み込んでしまう。そこでレアは、最後に生まれたゼウスをひそかにクレタ島の妖精(ようせい)たちに預け、かわりに大きな石を産着でくるんで彼に飲み込ませる。やがて成長したゼウスとクロノスの腹から吐き出された兄弟たちが、父を討つことになる。

 レアは、フリギアの大地女神キベレ(神々の母とよばれる)と同一視されるが、彼女はまた狂気のなかに世界をさまようディオニソスを癒(いや)して、彼に秘教を授けたとされる。

[中務哲郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レア」の意味・わかりやすい解説

レア
Rhea americana; greater rhea

レア目レア科。全長 1.3~1.4m。アメリカダチョウという別名があるように,大型では退化して飛翔力がない。体形もダチョウに似ていて頸が長く,脚も長くて頑丈だが,趾(あしゆび)は 3本(ダチョウは 2本)である。羽色はやや個体変異があるが,全体に汚れたような灰褐色。ブラジル中部からアルゼンチン中部にかけての草原やサバナ,疎林,農耕地などに生息する。繁殖は 1羽の雄が数羽の雌とつがいになって行なう。雌たちは同じ巣に卵を産み,雄が巣づくりから抱卵,育雛をする。雄が抱卵を始めると,雌はほかの雄とつがう。レア科 Rheidaeにはもう 1種ダーウィンレア Rhea pennata がいる。本種よりやや小型で全長 1m。羽色は全身灰褐色で,全体をかなり目立つ白い小斑が覆う。ペルー南部からアルゼンチン南部にかけての高地の草原に生息する。

レア
Rhea

ギリシア神話の女神。ウラノスとガイアから生れたティタンたちの一人で,兄弟のクロノスの妻となり,ヘスチア,デメーテル,ヘラ,ハデス,ポセイドンを生んだ。しかし子供に王座を奪われるであろうという予言を受けていたクロノスは彼らを次々に飲み込んだため,末子ゼウスが生れたとき,彼女は産着に大石を包んで,これを赤子と偽って,クロノスに飲み込ませておいて,ゼウスをクレタ島のイダ山中の岩屋にかくまって育てた。神々の母であることから,のちにフリュギアの大母神キュベレと同一視された。

レア
Rhea

土星衛星。1672年ジョバンニ・ドメニコ・カッシーニが発見。土星の衛星ではチタンに次ぐ大きさで直径約 1530km,光度 10等,密度 1.3。公転周期 4日12時間28分。ボイジャー1号(→ボイジャー)により,この衛星には大小さまざまな無数のクレータのあることが発見された。

レア
Leah

旧約聖書中の人物。ヤコブの妻。ハランのラバンの娘,ラケルの姉。ヤコブに愛されていたラケルより先にヤコブの妻となり,ルベン,シメオン,レビ,ユダを生んだ。彼女はまた婢女ジルパをヤコブに与え,ジルパはガド,アセルを生んだ。その後レアはイッサカル,ゼブルン,デナを得た。彼女は死後アブラハム,サラ,イサク,リベカが葬られているカナンの地マムレの東マクペラの墓地に埋葬された。ルベン,シメオン,レビ,ユダ,ガド,ゼブルン,イッサカルはラケルの子らとともにイスラエル 12部族の祖先となった (創世記 29,30,49章) 。

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