アルキルアルミニウム(その他表記)aluminium alkyl

改訂新版 世界大百科事典 「アルキルアルミニウム」の意味・わかりやすい解説

アルキルアルミニウム
aluminium alkyl

アルミニウムとアルキル基とが結合した化合物の総称。アルミニウム-炭素結合をもち,有機金属化合物に属する。一般に常温では無色透明な液体または低融点の固体であり,最もよく用いられる低級アルキルアルミニウムは,空気に触れると自然発火し,また水と接触すると激しく反応するので危険性がきわめて高い。反応性の激しさの程度は,一般に炭素数が増すにしたがって低くなる。また引火点は融点以下である。したがって不活性雰囲気中で保存しなければならない。これらの性質のため,消防法では危険物第4類の特殊引火物に分類されている。

 工業的には,水素化アルミニウムとオレフィンとの反応,アルミニウムとハロゲン化アルキルとの反応によって製造される。実験室では,アルミニウムとアルキル水銀(Ⅱ),または塩化アルミニウムグリニャール試薬との反応によって合成される。オレフィンの重合反応に対するチーグラー触媒系の主要成分として重要であり,また還元剤,アルキル化剤としても使われる。

化学式Al2(CH36。常温ではほとんど単量体Al(CH33としては存在しない。融点15℃,沸点126℃,比重0.752(20℃)。固体では下式に示すようにメチル基が橋架けした構造をしている。

単量体はアルミニウムのまわりに炭素原子が平面三角形に結合した形をしている(215℃/30mmHg)。

化学式Al(C2H53。融点-52.5℃,沸点75~80℃(2.5mmHg),比重0.84(20℃)。

化学式Al(C3H73。融点-107℃,沸点110℃(13mmHg),比重0.82(20℃)。

 以上の化合物も,室温では二量体である。アルキル基が大きくなると会合を妨げ,イソプロピルイソブチルの同族体では会合度が著しく小さくなる。またアルキル基が水素,ハロゲン等で置換された化合物も多く知られている。さらにアルキル基の代りにフェニル基を有する化合物もあり,たとえばトリフェニルアルミニウムAl2(C6H56(融点225~228℃)は結晶状態ではAl2(CH36に類似の構造をもち,二つの橋架けフェニル基はAl-Al軸に垂直な面上にある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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