日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化アルミニウム」の意味・わかりやすい解説
塩化アルミニウム
えんかあるみにうむ
aluminium chloride
アルミニウムと塩素の化合物。熱したアルミニウムに塩素を通すと無水和物が得られる。工業的にはボーキサイトとコークスの混合物に塩素を通じてつくる。無色結晶であるが、工業製品は黄色に着色していることが多い。177.8℃で昇華する。潮解性で、空気中で加水分解して塩化水素の白煙を生ずる。水には溶けるが加水分解して酸性を示し、塩基性塩を生成する。金属アルミニウムを塩酸に溶かし、濃塩酸を加え、寒剤で冷却すると六水和物AlCl3・6H2Oが得られる。無水和物の蒸気密度は400℃まで二量体分子Al2Cl6に相当し、塩素原子がアルミニウム原子の周りにひずんだ四面体型に配位し、AlCl4四面体が塩素2原子を共有して結合した構造をもっている。
800℃以上では単量体になる。結晶では八面体型のAlCl6があり、その八面体の一つおきの辺を共有して三次元的に連なった巨大分子である。有機溶媒に溶け、ベンゼン溶液中でも二量体が存在する。フリーデル‐クラフツ反応、石油クラッキングやポリエチレンなどの合成に触媒として用いられる。六水和物は無色柱状晶。八面体型の[Al(H2O)6]3+とCl-のイオン結晶である。加熱しても無水塩とはならず、分解して塩化水素を発生して酸化アルミニウムとなる。水、エタノールに溶ける。水溶液は加水分解して酸性を示す。六水和物は防腐剤、染色などに用いられる。
[守永健一・中原勝儼]