化学式AlCl3。無水物と結晶水を6分子もつ水和物があり,種々の点で互いに異なる性質をもつ。
白色固体,通常は不純物のためやや黄色を帯びる。融点182.7℃(755mmHg)。揮発性が大きく,180℃から昇華する。比重2.44(25℃)。アルミニウム金属に塩素または塩化水素ガスを作用させてつくる。潮解性が大きく,湿った空気中では加水分解して塩化水素の白煙を生ずる。固体では図に示すような巨大分子の構造をしており,Alには6個のClが,Clには2個のAlが結合している。気体はAl2Cl6で表される二量体で,Alには4個のClが四面体型に結合している。ただし800℃以上では単量体AlCl3となる。液体の電気伝導度はきわめて小さく,Al-Cl結合は共有性であることを示している。フリーデル=クラフツ反応の触媒として,以前より使われている。その他種々の重合,異性化などの諸反応に強い活性を示し,触媒として用いる。
化学式AlCl3・6H2O。水酸化アルミニウムを塩酸に溶かし,塩化水素で飽和させると得られる。結晶中ではAl3⁺に6個の水分子が配位している。水にきわめて溶けやすく,20℃において100gの水にAlCl3として47.3gまで溶ける。水溶液では加水分解して水酸化物を生成し,溶液は酸性になる。塩析剤としてセッケン工業に,また木材等の防腐,染色,写真の定着,防臭などに使われる。
水酸化アルミニウムAl(OH)3を塩酸に溶解すると,塩基性塩化アルミニウムが重合したポリ塩化アルミニウム[Al2(OH)nCl6-n]m(n≒3,m≦10)が得られる。無色ないし淡黄色の液体。凝集力が大きいため,浄水剤として用いられている。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アルミニウムと塩素の化合物。熱したアルミニウムに塩素を通すと無水和物が得られる。工業的にはボーキサイトとコークスの混合物に塩素を通じてつくる。無色結晶であるが、工業製品は黄色に着色していることが多い。177.8℃で昇華する。潮解性で、空気中で加水分解して塩化水素の白煙を生ずる。水には溶けるが加水分解して酸性を示し、塩基性塩を生成する。金属アルミニウムを塩酸に溶かし、濃塩酸を加え、寒剤で冷却すると六水和物AlCl3・6H2Oが得られる。無水和物の蒸気密度は400℃まで二量体分子Al2Cl6に相当し、塩素原子がアルミニウム原子の周りにひずんだ四面体型に配位し、AlCl4四面体が塩素2原子を共有して結合した構造をもっている。
800℃以上では単量体になる。結晶では八面体型のAlCl6があり、その八面体の一つおきの辺を共有して三次元的に連なった巨大分子である。有機溶媒に溶け、ベンゼン溶液中でも二量体が存在する。フリーデル‐クラフツ反応、石油クラッキングやポリエチレンなどの合成に触媒として用いられる。六水和物は無色柱状晶。八面体型の[Al(H2O)6]3+とCl-のイオン結晶である。加熱しても無水塩とはならず、分解して塩化水素を発生して酸化アルミニウムとなる。水、エタノールに溶ける。水溶液は加水分解して酸性を示す。六水和物は防腐剤、染色などに用いられる。
[守永健一・中原勝儼]
塩化アルミニウム
AlCl3
式量 133.3
融点 190℃(2.5気圧)
沸点 182.7℃/755mmHg
比重 2.44(測定温度25℃)
結晶系 六方
AlCl3(133.34).アルミニウムを塩素または塩化水素中で加熱すると得られる.無色の板状晶(通常は白色の固体).融点190 ℃(封管中2.5 atm).177.8 ℃ で昇華する.潮解性,揮発性があり,空気中では加水分解して塩化水素の白煙を生じる.水に易溶.水とはげしく反応して発熱する.水溶液は強酸性を示す.ほとんどすべての有機溶媒に可溶.昇華した気体は400 ℃ 以下では二量体で,800 ℃ 以上では単量体となる.多くの無機化合物や有機化合物とともに付加物を生成する.二量体および付加物をつくるのは,ほかから電子対を受け入れやすいためである.摂取,吸収すると毒性が強い.フリーデル-クラフツ反応や石油クラッキングの酸触媒,重合触媒,異性化触媒に用いられる.アルミニウムを熱塩酸に溶かして冷却すると六水和物が得られる.六水和物は無色の粉末.密度2.40~2.44 g cm-3.潮解性がある.水に易溶.温水では塩化水素を発生する.100 ℃ で分解する.エタノール,エーテルに易溶.有機合成用触媒,医薬品(収れん剤),化粧品,媒染剤,木材の防腐剤として用いられる.[CAS 7446-70-0:AlCl3][CAS 7784-13-6:AlCl3・6H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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