液体または固体の試料を規定の条件下で加熱すると,しだいに蒸気圧が大きくなり,あるいは熱分解反応によって可燃性の蒸気が発生し,空気と混合して可燃性の混合気を生じ,それに小さな炎を近づけると瞬間的にせん光を発して燃焼が起こる。このときの最低温度を引火点と呼ぶ。点火用の炎を取り除くと燃焼はやむ。燃焼を継続させるためにはこれより少し高い温度に保つ必要があり,この温度を燃焼点fire pointと呼ぶ。石油系燃料の場合の引火点試験装置には密閉式(ペンスキー=マルテン式,タグ式など)と開放式(クリーブランド式)がある。密閉式は引火点の低い試料の測定に用いられるもので,試料油の容器にふたが施されており,炎を近づけるときにふたをあける。開放式は試料油の容器にふたのないもので,引火点が比較的高い潤滑油やアスファルトなどの試料の測定に用いられる。石油製品には安全性の見地から引火点の上限がJISに定められている(たとえば,1号灯油は40℃以上,2号軽油(ディーゼル用)は50℃以上,1種重油は60℃以上)。
執筆者:冨永 博夫
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揮発性の液体や固体から発生する蒸気の圧力が、周囲の空気と可燃性の混合気体をつくるまでに高まると、火を近づけることによって発火する。このときの最低温度を引火点という。さらに昇温を続けると、火を近づけたときに連続して燃焼がおこる温度となるが、これは燃焼点とよんで引火点とは区別する。つまり引火点では、点火用の炎を除くと燃焼はやんでしまう。引火点の測定には密閉式法と開放式法の2法があるが、前者は引火点の低いものについて用いられる。これは、黄銅の容器に試料を入れて加熱し、ときおり蓋(ふた)をあけて小炎を近づけて炎の発生を調べる。潤滑油のように引火点の高いものでは開放式の装置が用いられる。
[山崎 昶]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
液体あるいは固体の可燃性物質が,空気中で小さい炎によって発火するのに必要な蒸気圧になる最低温度をいう.このときの蒸気圧は爆発下限界に相当するので,これを下部引火点ともいい,爆発上限界に相当する蒸気圧を呈する温度を上部引火点という.可燃性物質が液体炭化水素の場合,引火点(tF℃)と沸点(tB℃)の関係はおよそ次式で表される.
tF = 0.6946tB - 73.7
代表的な可燃性物質の引火点は,ヘキサン-26 ℃,二硫化炭素-25 ℃,アセトン-20 ℃,ベンゼン-11 ℃,トルエン7 ℃,メタノール11 ℃,エタノール12 ℃.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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