化学辞典 第2版 「アンチモン酸塩」の解説
アンチモン酸塩
アンチモンサンエン
antimonate
アンチモン(Ⅴ)の水酸化物Sb(OH)5は両性で,酸に相当する形をアンチモン酸,その塩をアンチモン酸塩という.遊離の酸の存在は認められていない.化学組成から無水塩はオルトアンチモン酸塩MⅠ3SbO4,二アンチモン酸塩またはピロアンチモン酸塩MⅠ4Sb2O7,三アンチモン酸塩MⅠ5Sb3O10,メタアンチモン酸塩 (MⅠSbO3)n などが記載されている.いずれも無水物は脱水結合してSbO6のO原子のいくつかを共有したポリマー型複酸化物である.また,水溶液中で [SbO4]3- は存在せず,イオンとして認められるのはヘキサヒドロキソアンチモン酸イオン [Sb(OH)6]- である([別用語参照]ヘキサヒドロキソアンチモン(Ⅴ)酸塩).固体でも水和物ではこの構造が保たれているものがある.たとえば,通称,ピロアンチモン酸ナトリウムNa2H2Sb2O7・5H2OはNa[Sb(OH)6]であり,メタアンチモン酸カリウムKSbO3・3H2OはK[Sb(OH)6]である.メタアンチモン酸ナトリウムNaSbO3は,エナメルのつや消し剤に用いられる.また,橙赤色の粉末のPb3(SbO4)2は,ペイント顔料や,陶器やガラスの着色に用いられる.亜アンチモン酸(塩)は,相当する SbⅢの酸とその塩であり,遊離の酸は単離されていない.塩は,組成からオルト塩MⅠ3SbO3,メタ塩 (MⅠSbO2)n,ピロ塩MⅠ4Sb2O5などが記載されている.多くはポリマー構造をもつと思われるが,なかには固体のNa3SbO3のように,構造中に独立したSbO3の存在が認められるものもある.水溶液中のイオンは [Sb(OH)4]- と考えられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報