改訂新版 世界大百科事典 「アンチモン酸」の意味・わかりやすい解説
アンチモン酸 (アンチモンさん)
antimonic acid
酸化アンチモン(Ⅴ)水和物Sb2O5・nH2Oに相当し,オルトアンチモン酸H3SbO4,メタアンチモン酸HSbO3,二アンチモン酸H4Sb2O7,三アンチモン酸H5Sb3O10などが水溶液中に存在するといわれている。白色の非晶物で,コロイドの性質が強い。塩化アンチモン(Ⅴ)SbCl5に多量の水を作用させて二アンチモン酸を得ることができるといわれるが,組成が一定でなく,同定はむずかしい。酸化アンチモン(Ⅴ)Sb2O5を過剰の水酸化カリウムと溶融し,少量の水に溶解して少し煮沸するか,多量の冷水を加えるとK2H2Sb2O7・6H2Oの組成の塩が生ずる。しかし,実際にはヘキサヒドロオキソアンチモン(Ⅴ)酸塩K[Sb(OH)6]である。また,ナトリウム塩Na[Sb(OH)6]は難溶性であるため,分析の際にアンチモンを沈殿させるのに用いることもある。
執筆者:漆山 秋雄
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