改訂新版 世界大百科事典 「あんば大杉」の意味・わかりやすい解説
あんば大杉 (あんばおおすぎ)
茨城県稲敷市の旧桜川村の阿波大杉神社を中心とする信仰。疱瘡除けの神として,関東地方の各地に広まり,境内社,小祠としてまつられている。千葉県印旛郡や香取郡では,〈あんば大杉大明神,悪魔をはらってヨイヤサ〉というあんばばやしが伝えられていて,3月の疱瘡神の祭日にあんば踊をする。神社から借り受けた天狗面や,神輿が村内を回って,悪疫をはらうなどの行事を伝える地域も見られる。疱瘡,天然痘などの悪疫をもたらす神をまつりこめて,送り出す疫神祭的な信仰と見ることができる。江戸時代の《武江年表》などにも記録され,突発的な祭礼の流行が知られているので,江戸時代の流行神(はやりがみ)が,利根川などの舟運を媒介に,各地に定着していったものと考えられる。一方,千葉・茨城・福島県の海岸部では,豊漁の神とされたり,若者が休日を強要するのにあんば様の祭りを行うが,流行神としての信仰との関連は明らかではない。
執筆者:紙谷 威広
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