化学辞典 第2版 「アンモニア合成触媒」の解説
アンモニア合成触媒
アンモニアゴウセイショクバイ
ammonia synthesis catalyst
1910年,ドイツのB.A.S.F.社のA. Mittaschらによって見いだされたFe-Al2O3-K2O触媒が今日でも使われている.通常,Fe3O4のほかに2質量% 程度のAl2O3,0.5~1質量% のK2Oを含むが,このほかにMgO,CaO,SiO2などを含むものも多い.製法としては,沈殿法もあるが,実際には溶融法がもっぱら採用されている.純鉄を酸化燃焼してFe3O4とし,この粉末をAl2O3,KNO3とまぜて電気炉で1600 ℃ 以上に加熱して溶融させ,均一にまぜ合わせる.Al2O3はFe3O4中に固溶し,触媒として使用前水素で還元した際,鉄結晶の成長を抑え,鉄表面積を高く維持する役を果たす.K2OもFe3O4中に0.5質量% 程度溶けるが,還元の際に表面に集まる.K2Oの作用はAl2O3のような構造的な役割ではなく,化学的効果であるとされている.アンモニアを合成できる触媒は鉄のみではなく,オスミウム,ウラン,ルテニウム,コバルト,モリブデンなどにも合成活性がある.活性の高い鉄触媒は約150 ℃ からアンモニア合成活性を示すが,実際の工業生産では,450~500 ℃ の反応温度が採用され,100~300 atm の高圧下で反応が行われる.最近,ルテニウム系触媒が新しい工業触媒として開発されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報