日本大百科全書(ニッポニカ) 「オスミウム」の意味・わかりやすい解説
オスミウム
おすみうむ
osmium
周期表第8族に属し、白金族元素の一つ。1804年イギリスのテナントによって発見された。発見のもととなった酸化オスミウム(Ⅷ)OsO4の蒸気が刺激臭を有することから、臭気を意味するギリシア語のosmeにちなんで命名された。白金鉱の中に主としてイリジウムの合金、すなわちイリドスミンとして産出する。融解物から固化させたものは青灰色の結晶で、その比重は物質中最高である。融点も全元素中でタングステンに次いで高い。硬さは水晶と同程度(モース硬度7.0)で、白金族元素中最高であるが、一方、もろくて、砕いて容易に粉末にすることができる。酸化物を還元してつくったものは青黒色微粉末で、比重もいくぶん小さい。一般に熱濃硫酸、濃硝酸には溶けるが、王水には溶けにくい。酸素が共存すれば塩酸にも溶ける。
酸素と結合する傾向は白金族中でもっとも強く、海綿状のものは空気中に放置しただけで白熱する。塊状のものでも200~400℃で酸化し始める。酸化生成物は酸化オスミウム(Ⅷ)である。これはきわめて有毒な気体で、粘膜、肺、目などを刺激し、失明の危険があるから、酸化物そのものはもちろん、金属オスミウムの取扱いにも十分の注意が必要である。この酸化物は有機物で還元され酸化オスミウム(Ⅳ)となる。オスミウムは0から+8まで各種の酸化数をとりうるが、+4の化合物がもっとも多く、6配位の錯体が多数知られている。
用途としては、ルテニウムやロジウムなど他の白金族元素との合金が主要なものである。融点が高く、硬いので電気接点材料に、また耐摩耗性、耐食性があるのでペン先、ピボットなどに使用される。
[鳥居泰男]