改訂新版 世界大百科事典 「イベリア図式美術」の意味・わかりやすい解説
イベリア図式美術 (イベリアずしきびじゅつ)
Iberian schematic art
イベリア半島全体に広く分布する,新石器時代および青銅器時代の岩面画の総称。時代的にはレバント美術の後に続くが,起源は異なる。形象の多くが著しく図式化,抽象化されているため,この名がある。とくに人物像は極端に単純化,様式化され,細い針金状,あるいは二つの三角形を頂点で接合した砂時計形のものも見られる。動物像も,鹿,ツル,コウノトリ,カメなどが単純な線に還元される。また,太陽の象徴的表現,太陽と人物を組み合わせた形象が認められ,この美術には太陽崇拝が関連していたと考えられる。制作者は家畜飼養,農耕を営み,紡織,土器,そして一部は冶金術を知る人々であった。初期には彩画が多く,後には刻画が増える。一部の刻画はポルトガル北部やスペイン北西部で,鉄器時代まで持続した。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報