改訂新版 世界大百科事典 「インコアナナス」の意味・わかりやすい解説
インコアナナス
lobster claws
Vriesea carinata Wawra
パイナップル科の小型の多年草で,ブラジルの熱帯雨林の樹上に着生している。葉は15~20枚で,ゆるい筒状をなす。葉質は薄く,淡黄緑色で,長さ15~20cm,幅2~3cm。葉縁に鋸歯はなく,やわらかで,全体に少しねじれる。花茎は長さ20~25cmで赤色。先端に長さ4~8cm,幅6~8cmの扁平な花穂をつける。2列に多数つく苞は先端が淡黄緑色でとがり,しだいに黄色になり,基部は赤色で美しい。花は細い筒状で,花弁の先端は黄色で,下部は萼に包まれる。花穂部が大きいので,茎は横に曲がりやすく,支柱が必要である。昭和の初めに渡来し,じょうぶで株がよくふえるので普及した。秋~春によく開花し,2ヵ月以上楽しめる。強い光をさけ,夏は半日陰で,多湿に保つ。寒さには強く,8℃くらいで越冬する。インコアナナス属Vrieseaは中南米に200種以上が分布し,これらから多数の種が選択され栽培されているだけでなく,交配によって作出された園芸品種も多い。斑入りの葉を観賞するものもある。属名のVrieseaはオランダの植物学者ド・フリースにちなんでつけられた。フリーセア・マリアエV.×mariae Andréは交雑種で,花穂が大きく観賞価値も高い。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報