日本大百科全書(ニッポニカ) 「インバウンド消費」の意味・わかりやすい解説
インバウンド消費
いんばうんどしょうひ
inbound tourism consumption
非国内居住者による国内消費。インバウンドには「海外から入ってくる」という意味があり、日本からみたインバウンド消費は訪日外国人消費をさす。インバウンド需要ともいう。対義語はアウトバウンド消費outbound tourism consumptionで、日本人の海外での消費をいう。ここでは、おもに日本のインバウンド消費について解説する。
インバウンド消費の計上対象は訪日観光客のほか、日本で開かれる国際会議やイベントへの参加者、企業の研修・報奨旅行などによる訪日者で、航空機などの乗員、航空機などの経由地での一時滞在(トランジット)者、また留学生など1年以上の滞在者によるものは除かれる。日本のインバウンド消費は、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行期を除き、ほぼ一貫して増加傾向にある。国内総生産(GDP)統計によると、インバウンド消費額(訪日客の名目消費額)は2012年度(平成24)の9529億円から2019年度(令和1)に4兆1286億円に増え、2023年には約6兆円に達する見通しである。これは2020年の日本の個人消費全体の約2%を占める。日本製品を大量に購入する「爆買い」ということばが象徴したように、2010年代にはインバウンド消費の4分の1以上を訪日中国人が占めたが、2020年以降は韓国、台湾、香港(ホンコン)、アメリカ、オーストラリアなどに訪日客の国・地域のすそ野が広がった。インバウンド消費の盛り上がりは、(1)円安傾向の定着、(2)格安航空会社(LCC)の参入や空港発着枠の拡大による日本就航便の増加、(3)ビザ発給条件や免税対象品などの規制緩和、(4)外国人向け施設の整備の進捗(しんちょく)、(5)アニメ、アイドル、日本食などクールジャパンとよばれる日本ブランド分野の海外人気、などがおもな要因である。人口減少で日本の国内消費が低迷するなか、インバウンド消費は個人消費を底上げして景気を刺激する効果をもつため、政府は目標値を掲げて訪日促進策を講じている。民間では、家電量販店、百貨店、ドラッグストア、航空・空港・鉄道会社、テーマパーク、ホテルなどがインバウンド消費の恩恵にあずかることが多く、株式市場ではこれらをインバウンド銘柄とよんでいる。
[矢野 武 2023年10月18日]