改訂新版 世界大百科事典 「ウィーラー」の意味・わかりやすい解説
ウィーラー
Robert Eric Mortimer Wheeler
生没年:1890-1976
イギリスの考古学者。グラスゴーに生まれ,ロンドン大学で古典学を学んだのち,国立ウェールズ博物館長からロンドン博物館に移って,ここを典型的な地域博物館として整備し,またイギリスにおける考古学の研究と教育に対する彼の理想を実現するため,1937年ロンドン大学考古学研究所の設立に尽力して初代所長となった。この間,問題意識をもって〈人間を発掘する〉ことを目指して発掘方法の改良に努め,メードゥン・カスルにおいて〈グリッド・システム〉とも呼ばれるウィーラー法を確立した。44年インド考古総局長,49年にはパキスタン政府考古局顧問となって,ウィーラー法を普及させるとともに,インド大陸古代史の解明に大きく貢献した。1948年帰国し,ロンドン大学考古学研究所で研究活動を続ける一方,49-68年の間,ローヤル・アカデミーのセクレタリーとして財政の確立,海外研究所の充実などに寄与し,またラジオやテレビに出演して考古学の成果を一般に広めた。ローヤル・アカデミーは彼の功績をたたえて,〈ウィーラー記念講義〉を設けている。52年ナイトに叙せられた。65歳でもなお《発掘中Still Digging》(1955)と題する自伝を出版した。名著《発掘の理念Archaeology from the Earth》(1954)を通じて日本考古学にも大きな影響を与えた。
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報