改訂新版 世界大百科事典 「ウェールト」の意味・わかりやすい解説
ウェールト
Georg Weerth
生没年:1822-56
ドイツの著作家。《ケルン新聞》の編集に協力するかたわら,抒情詩を発表してドイツ文壇に名のりをあげた。1843年イギリスに渡ってエンゲルスと親交を結び,抒情詩や小説を通じてプロレタリアート(無産階級)の生活の悲惨さを訴えた。46年にベルギーに移住してマルクスと接触し,マルクスの主宰する《新ライン新聞》の文芸面の編集に従事した。多くの評論を発表し,その後ドイツの商社の代理業者としてヨーロッパ諸国を転々とし,西インド諸島で生涯の幕を閉じた。エンゲルスは彼を,〈ドイツ・プロレタリアートの最初の,もっとも重要な詩人〉と呼んだ。彼の詩作を年代をおって読めば,はじめ民謡調であったものが,次第に階級意識に目ざめてプロレタリアートのための詩人となっていく過程がはっきり読みとれる。第2次世界大戦後,東ドイツでとくに高く評価され,西ドイツでは1960年代末から再評価がすすめられている。
執筆者:宮下 啓三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報