改訂新版 世界大百科事典 「ウワバイン」の意味・わかりやすい解説
ウワバイン
ouabain
キョウチクトウ科の植物Acocanthera ouabaioの根や皮,またはStrophanthus gratusの種子などから得られる心臓毒。アフリカの原住民の間では毒矢として用いられていた。ステロイドとラムノースからなるいわゆる強心配糖体の一種で薬学でいうG-ストロファンチンと同じ。動物細胞の細胞質膜の膜電位形成に最も重要な役割を担っている。Na⁺,K⁺-ATPアーゼに特異的に結合して活性を阻害する。動物細胞に与えると,ナトリウムイオンNa⁺,カリウムイオンK⁺の対向的輸送が阻害される結果,グルコースなどの糖やアミノ酸などの取込みが抑えられる。強心剤としても用いられるが,これも上記の作用により,Na⁺,K⁺のバランスを変化させることによって心筋の興奮に変化を与えることによると考えられている。
執筆者:大隅 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報