日本大百科全書(ニッポニカ) 「エウヘロプス」の意味・わかりやすい解説
エウヘロプス
えうへろぷす
euhelops
[学] Euhelopus zdanskyi
竜盤目竜脚形類(亜目)竜脚類(下目)エウサウロポッド類Eusauropoda(真竜脚類)に属する恐竜。中国のジュラ紀後期、約1億5600万年~1億5000万年前の地層から産出した。推定全長は約15メートルであるが、実際には尾の部分は発見されておらず、尾は短いと推測されている。頸(くび)が非常に長い草食恐竜で、頸の長さだけで7メートルはある。普通、竜脚類の頸椎(けいつい)の数は平均12~15個といわれており、エウヘロプスは17個もあるが、同類のマメンチサウルスMamenchisaurusの19個には及ばない。椎骨のそれぞれは長く伸びており、ほんのわずか分岐した神経棘(きょく)があった。前肢が長く、その体に対する比率はジュラ紀中期のケティオサウルスCetiosaurusよりは大きく、後期のブラキオサウルスBrachiosaurusよりは小さいと推測されている。同じ竜脚類でも、ブラキオサウルスのように頸と同時に前肢を伸長させる方法はとらず、もっぱら頸を中心に伸長する方法をとったグループの一つといえる。胴体はカマラサウルスCamarasaurus型である。頭部もカマラサウルスに似ているが、いわゆる「獅子(しし)鼻」ではなく、やや細長く口先もとがっていた。歯は典型的なスプーン型で、前部と側部に生えていた。ごつい歯を備えていた点や、頭頂部に大きな鼻腔(びくう)があった点もカマラサウルスと似ている。竜脚類のなかでは、同じ17個の頸椎をもつオメイサウルスOmeisaurus、19個のマメンチサウルスなどとともにマメンチサウルス科Mamenchisauridaeとしてまとめる考えもある。頸椎数が多いのに加えて、各頸椎の長さが顕著であること、歯がスプーン型であることなどの共有形質が多いからである。エウヘロプスは、1929年にスウェーデンの古生物学者ウィーマンCarl Wiman(1867―1944)により、生息していたと考えられた沼沢地にちなんで「ヘロプス」Helopus(「沼沢の肢(あし)」という意味)と命名記載されたが、これは1832年にすでに鳥の属名として発効していたので、1956年にローマーが「エウヘロプス」Euhelopus(「エウ」=本当の)という新属名を与えた。標本はスウェーデンのウプサラ大学の古生物博物館に展示・保管されている。
[小畠郁生]