日本大百科全書(ニッポニカ) 「マメンチサウルス」の意味・わかりやすい解説
マメンチサウルス
まめんちさうるす
mamenchisaur
[学] Mamenchisaurus hochuanensis
竜盤目竜脚形類(亜目)竜脚類(下目)エウサウロポッド類Eusauropoda(真竜脚類)に属する恐竜。中国のジュラ紀後期、約1億6770万年~1億4550万年前の地層から産出した全長約23メートルの大形草食恐竜。竜脚類のなかでも非常に頸(くび)が長く、全長の半分の11メートルもある。頸椎(けいつい)は19個にも達し、非常に長く発達した頸肋骨(けいろっこつ)が重なり合うように並び、しっかりつながっているので、頸の強度が維持されている。ある個体では頸肋骨の長さが最大4メートルにも達し、頸はあまり曲げられなかったらしい。頸の付け根の解剖学的特徴だけでなく、生体力学的な検討結果では、頸の動きは最大で上方と左右に30度ずつ程度に限られていた。この恐竜は以前は頭骨がみつからないときに肢骨などの特徴からディプロドクス科Diplodocidaeと類縁関係にあると考えられていたが、その後発見された歯のついた下顎(かがく)から、エウヘロプスEuhelopusに似た頭骨と判明した。こうしてマメンチサウルスはエウサウロポッド類に含められることになるが、オメイサウルスOmeisaurusやエウヘロプスとともに、頸椎17個以上、非常に長い頸椎、スプーン型の歯などを共有特徴としてあげる場合がある。マメンチサウルスの椎骨自体は薄いつくりで、蜂(はち)の巣状に軽量化されていた。頸を地面にほぼ平行にまっすぐ伸ばしているのが通常の姿勢であったろう。不自然な姿勢だと頸椎や頸肋骨が折れたり脱臼(だっきゅう)したりしてしまうからである。マメンチサウルスの長い頸は、巨体をゆっくり動かしながら広い範囲の植物を食べるための装置であったと考えられる。頸を左右に振るだけで広範な面積に生えている木の葉を口にすることができた。こうしてエネルギーを節約することができたのである。マメンチサウルスの足裏の面積は体重のわりに狭いので、つねに3本の肢(あし)で体を支え、1本だけを動かしてゆっくり歩いたと思われ、時速2.5キロメートルほどと推測されている。
[小畠郁生]
『NHKスペシャル取材班編『これが恐竜だ!――科学的アプローチによる新しい恐竜像』(1995・新潮社)』