改訂新版 世界大百科事典 「オサラン」の意味・わかりやすい解説
オサラン
Eria reptans(Fr.et Sav.)Makino
日本南部,暖帯林の樹皮に着生する小型のラン科植物。和名は,並んだ偽球茎を織機の筬(おさ)にたとえたもの。偽球茎があり連なる。春,古い偽球茎の先に新しい偽球茎をつけ,葉を2枚展開する。葉は狭長楕円形で,長さ5~8cm,冬に脱落する。6~7月に葉間より花茎を出し,通常1~2花をつける。花は唇弁を除き白色,半開し,直径約1cm。背萼片は長さ約8mm。側萼片は基部が3~4mmの顎になる。唇弁は広いくさび形で3裂し,中裂片は黄色い。花粉塊は8個。本州(南西部,伊豆七島),四国,九州,奄美大島,台湾に分布する。
オサラン属Eriaはインドから東南アジア,さらに太平洋諸島にかけて500種以上が知られている大きな着生ランの群で,花は小さいが多数つけ美しいため,熱帯ランとしていくつかの種が栽培される。日本にはオオオサランE.corneri Reichb.f.とリュウキュウセッコクE.ovata Lindl.の2種があり,主に琉球に分布する。セッコク(セキコク)属Dendrobiumに近縁だが,オサラン属は8個の,セッコク属では4個の花粉塊を有することで区別される。
執筆者:井上 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報