日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラン科」の意味・わかりやすい解説
ラン科
らんか
[学] Orchidaceae
単子葉植物。ヤクシマラン亜科、アツモリソウ亜科、ラン亜科の3グループに分類され、約700属2万5000種からなり、被子植物のなかでキク科と並び、もっとも大きな科である。両極地帯を除く南北両半球に広く分布するが、熱帯の雲霧林に種類が多い。日本には73属約220種分布する。APG分類では、ラン亜科がセッコク亜科、チドリソウ亜科、バンダ亜科と細分され、5亜科となっている。日本には約86属320種が分布するとされる。
園芸上は原産地により洋ランと東洋ランに分けるが、分類学的なものではない。なお、スズラン、ハラン、リュウゼツランなどはランの名はあるが、ラン科植物ではない。
多様な形態をもつ多年草で、つる状や低木状になるものもある。地生または着生植物で、通常独立栄養であるが、腐生のものもある。葉は単葉で、普通は全縁で平行脈があり、基部は葉鞘(ようしょう)となる。花は左右相称で、普通は両性花。花被片(かひへん)は、花弁、萼片(がくへん)各3枚からなる。雄しべと雌しべは合着して蕊柱(ずいちゅう)を形成し、通常軸の背側の雄しべ3本のうち、ラン亜科では外輪の1本の雄しべ、他の2亜科では2本の雄しべに稔性(ねんせい)がある。花粉室内の花粉は接着して1個の花粉塊をつくるのが普通である。子房は下位で、普通は180度ねじれるので、下側にできる唇弁は、本来は上側の花弁にあたるものである。多くは側膜胎座。果実は蒴果(さくか)または肉質の不裂開果。種子は多数で、胚乳(はいにゅう)はない。おもに樹上着生生活に適応して生活域を拡大し、昆虫に確実に花粉塊を付着させるよう、花にさまざまなくふうができ、種分化がおきたと考えられる。
観賞用に栽培されるほか、サイハイラン、シラン、セッコクの偽鱗茎(りんけい)、オニノヤガラの根茎、ツチアケビの果実などは薬用にし、バニラは果実から香料をとるため、熱帯で栽培される。
[井上 健 2019年5月21日]