改訂新版 世界大百科事典 「オットセイ保存条約」の意味・わかりやすい解説
オットセイ保存条約 (オットセイほぞんじょうやく)
正式には〈北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約Interim Convention on Conservation of North Pacific Fur Seals〉といい,1957年10月14日に発効した。
経緯
その毛皮が良質で高価なため,北太平洋のオットセイは欧米人により積極的な捕獲の対象とされ,19世紀末には資源が著しく減少した。この状況を憂慮したアメリカは,資源の保存および保護を目的とした条約の締結を関係国たる日本,イギリス(当時カナダはイギリス領),ロシアに呼びかけた結果,1911年,この4国を構成国とする〈おっとせい保護条約Convention for the protection of fur seals〉が締結された。同条約は40年に日本が破棄通告を行うまで存続し資源の増加に大きく寄与したが,条約の失効後オットセイは無規制のまま捕獲されたため再度資源が減少した。第2次世界大戦後,オットセイの捕獲は直ちに禁止されたが,52年アメリカの要請により開始された資源調査の結果を踏まえて,55年に日本,カナダ,ソ連,アメリカが参加してオットセイの保存を目的とした条約の作成交渉が開始され,57年に締結された。
内容
条約は,北太平洋のオットセイ資源の最大持続的生産性を達成すること(総頭数を毎年最大限度の捕獲が得られるような水準に到達させ,かつ,維持すること)を目的とする。このため,北緯30度以北の海上におけるオットセイの商業捕獲を禁止しており,また,北太平洋オットセイ委員会を設立して,資源調査を行っている。委員会の主要な役割は,条約の目的が達成されたか否かを研究するために,(1)資源調査,(2)(1)を踏まえて海上猟獲が陸上猟獲との関連で一定の条件下に許容されるか否かの研究およびその結果の勧告を行うこと,である。本来この勧告に基づき暫定条約にかわる本条約を作成することとしていたが,結論が出ないため条約は4回延長されて,84年10月13日まで有効とされた。その間は,資源に与える影響を考慮して4歳の雄を中心に捕獲された。また,日本とカナダは繁殖島をもっていないため商業捕獲ができないので,繁殖島をもっているアメリカとソ連が,委員会の勧告に基づき,毎年捕殺したオットセイ獣皮の15%ずつを,それぞれ日本およびカナダに配分することとなっていた。しかし,資源保存および野生動物保護のため,以後条約は延長されず失効した。
執筆者:関 興一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報