家庭医学館 「おとなの野球肩」の解説
おとなのやきゅうかた【おとなの野球肩 Baseball Shoulder】
野球などで、投球動作をくり返して肩を使いすぎると、肩関節の内部や周囲の組織にさまざまな損傷をおこします。これがいわゆる野球肩です。
損傷部位はいろいろで、腱板(けんばん)の上にある袋(滑液包(かつえきほう))に炎症がおこったり(肩峰下滑液包炎(けんぽうかかつえきほうえん))、腱板に損傷がおこったり、関節内の軟骨(関節唇(かんせつしん))が損傷したり骨からはがれたりします。
[症状]
日常生活ではあまり問題はないのですが、ボールを投げる動作をすると、肩に瞬間的な痛みがおこります。
この痛みは、ある1球の投球動作で感じ、その後の投球動作で痛みがともなう場合と、何球か投げているうちに少しずつ痛みが出てくる場合とがあります。
[検査と診断]
原因として、さまざまな部位の損傷が考えられるので、経験のある整形外科医の診察や検査を受け、どの部位が損傷しているか診断をしぼりこんでもらう必要があります。
確定診断は、関節鏡で関節内を見てつけますが、損傷部位がいくつもあることもあるので、痛みのおもな原因がどこかを予想しておく必要があります。
[治療]
まず4~5日は投球を禁止し、安静にします。痛みが続くようなら、さらに安静期間を増やし、十分な理学療法とストレッチを行なって、肩関節周囲の筋力を回復させます。
このような保存的治療を3~6か月行なっても症状が続くときは、関節鏡検査が必要になります。
現在は、関節鏡を使って損傷した関節唇を削ったり、修復したりできるようになっています。
しかし、野球肩は予防がもっともたいせつで、日ごろから腱板の機能を高める(肩をつくる)ため、筋力訓練とストレッチに努めるべきです。また、投球前のウオームアップや投球直後のアイシング、ストレッチは、炎症や損傷を慢性化させないためにも重要です。