改訂新版 世界大百科事典 「関節鏡」の意味・わかりやすい解説
関節鏡 (かんせつきょう)
arthroscope
関節腔の内部を観察するための内視鏡の一種。関節鏡の研究は日本では1920年に高木憲次によって始められ,その後渡辺正毅らの努力によって世界に先駆けて実用的な関節鏡が開発された。関節鏡検査arthroscopyは,光源と鏡筒からなる細い筒を小さな皮膚の切開部から挿入し,関節腔内に生理食塩水を満たした状態にして内部をのぞいて行う。最近まではひざの関節に限って行われていたが,器械の進歩によってひじや肩,あるいは足などの小さな関節の内腔をものぞくことが可能になった。関節鏡は関節内腔を観察し種々の病的状態の診断に威力を発揮するが,主として軟骨や滑膜の状態の判定や,靱帯(じんたい),半月板の損傷の発見などに役立つ。また最近では,ひざの内部の簡単な手術,たとえば遊離体の摘出や,半月板の部分切除などは関節鏡で観察しつつ,小さな切開部から鉗子や特殊なはさみを挿入して行うことが可能となった。
執筆者:工藤 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報