オトラント城奇譚(読み)オトラントじょうきたん(英語表記)The Castle of Otranto

改訂新版 世界大百科事典 「オトラント城奇譚」の意味・わかりやすい解説

オトラント城奇譚 (オトラントじょうきたん)
The Castle of Otranto

イギリスの文人H.ウォルポールの小説。1764年刊。イギリスのゴシック・ロマンス元祖と考えられている作品。古い物語と18世紀の新しい小説との融合を目指すと作者序文で述べている。物語の背景は中世で,場所はイタリア。現在のオトラント城の当主マンフレッドが正統な城主アルフォンゾーの子孫に位を譲って城を明け渡すという筋。作品の背景をなす道具立て,奇怪で超現実的な事件,とくに悪人としてのマンフレッドなどは,後のゴシックロマンス原型となる特質を持っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のオトラント城奇譚の言及

【怪奇小説】より

…主として怪奇や恐怖,超自然を扱う小説。1764年,イギリスの政治家でディレッタント文学者ホレス・ウォルポールが書いた《オトラント城奇譚》の爆発的人気によって,怪奇と恐怖が読者の中に一種の美意識を呼び起こす類の小説,一般に〈ゴシック・ロマンス〉と呼ばれる作品が世界文学史の中に公認された位置を占めることとなった。しかし,この種の作品は,生まれ故郷イギリスでは,せいぜい半世紀ほどしか盛りの時期をもつことができなかった。…

【ゴシック・ロマンス】より

…18世紀後半のイギリスに起こった,主としてゴシック風の建物を背景とし超自然的な怪奇を扱い,恐怖感を売物とする一群の小説。H.ウォルポールの《オトラント城奇譚》(1764)に始まり,W.ベックフォードなどを経て,絶頂期にはA.ラドクリフ,M.G.ルイス,W.ゴドウィンの諸作品を生み,C.R.マチューリンやアメリカのC.B.ブラウンにいたる。現在はさらに拡大し,小説の一ジャンルとして考える傾向が強い。…

※「オトラント城奇譚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android