改訂新版 世界大百科事典 「オーチュウ」の意味・わかりやすい解説
オーチュウ (烏秋)
drongo
スズメ目オーチュウ科Dicruridaeの鳥の総称。この科の鳥は約20種からなり,いずれも旧世界の亜熱帯から熱帯に分布する。そのうちアフリカ大陸に3種,マダガスカル島とその周辺の島々に4種,南アジアからニューギニアにかけて13種が生息しているが,日本には1種もいない。南アジアに広く分布するフキナガシオーチュウDicrurus paradiseusのように尾羽の一部が特別に長いものでは,この長い尾羽も含めると全長が70cm前後に及ぶものがある。しかし,多くの種は全長20~35cmの中型の鳥である。どの種も尾羽は体の割りに長く,かなり深い凹尾である。羽色は全身光沢のある黒色のものが多い。しかし全身が灰色の種もある。また,種によっては冠羽が発達している。くちばしはかなり大きく,幅広い。平地から低山帯の果樹園,農耕地,市街地の公園の林,疎林などに生息し,おもに開けた場所で生活している。枝上や電線に止まっていて,近くに飛んでくる昆虫類を空中でとらえる。群れを形成することはなく,たいがいつがいで生活し,かなり高い枝葉のよく繁茂した部分に営巣する。1腹の卵数は2~4個だが,詳しい繁殖生態は知られていない。フキナガシオーチュウは,他の種の鳴声や人のことばを巧みにまねる。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報