日本大百科全書(ニッポニカ) 「カエターニ」の意味・わかりやすい解説
カエターニ
かえたーに
Leone Caetani
(1869―1935)
イタリアのイスラム学者。名門貴族に生まれ、独学でセム学、イスラム学を修めた。19世紀末アラブ諸国を踏査し、のち記念碑的大作『イスラム年代記』10巻を著した。本書はムハンマド(マホメット)と正統カリフ時代に関する古典的研究書で、とくにアラブの大征服についての論が独創的である。つまり、セム人の故地はアラビア半島であるとの説を唱え、その民族移動の最後の、最大のものがアラブの大征服であると主張して、大征服の要因としてのイスラムの役割を否定した。ムッソリーニの一党と政見を異にしたり、個人的問題で研究生活をやめ、1925年カナダに渡り、バンクーバーで没した。
[花田宇秋 2016年10月19日]