改訂新版 世界大百科事典 「カシパン」の意味・わかりやすい解説
カシパン
sand dollar
cake urchin
ウニ綱カシパン亜目Laganinaに属する棘皮(きよくひ)動物の総称で,カシパン科,ハスノハカシパン科,スカシカシパン科など5科の種類が含まれる。別名カシパンウニ。平たい菓子パンか,大きなビスケットのような形をしているのでこの名がある。日本各地に分布し,浅海の砂泥中に潜って生活する。殻の形は円盤状で,周辺部がやや厚くなっているものや,後縁が波状になっているものもある。殻の全面には短いとげが密生し,上面のとげは長さ1mmくらい,下面のものは2~3mmほどで先端がとがっている。この類は砂の中での生活に適応してとげが退化したウニである。スカシカシパン類では花紋の延長上に殻を貫通する大きな5個の透し孔がある。殻の上面にある大きな5個の花紋は歩帯であって,ここに開く花紋孔から管足がでる。花紋の中心部に生殖板が融合してできた星形の生殖多孔板があり,その周囲に生殖孔が4~5個開いている。殻の下面中央に小さい口があり,口より歩帯溝が放射しているが,この形状は科によって一定していて,分類上の重要な特徴になっている。肛門は口と後端とのほぼ中間にある。海底の砂や泥の中の小動物やごみなどを食べる。
フジヤマカシパンLaganum fudsiyamaは殻の直径5cm前後,上面中央部が高く盛り上がり,生殖孔が5個ある。相模湾以南に分布し,水深50~600mにすむ。ヨツアナカシパンPeronella japonicaは日本特産種。殻は直径5cm以下で赤褐色。相模湾から九州,日本海沿岸に分布する。よく発生学の実験に用いられる。ハスノハカシパンScaphechinus mirabilisは暗紫色で直径8cmくらい。石狩湾以南の浅海にふつう。ナミベリハスノハカシパンS.brevisは暗紫色で,殻の後縁は波状になっている。殻径約5cm。室蘭以南の浅海に産する。スカシカシパンAstriclypeus manniは1属1種の日本特産種。大型種で,径15cmにもなる。5個の大きな細長い透し孔がある。相模湾以南に分布し,浅海にごくふつう。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報