日本大百科全書(ニッポニカ) 「カスナー」の意味・わかりやすい解説
カスナー
かすなー
Rudolf Kassner
(1873―1959)
オーストリアの観相学者。ウィーン大学でゲルマニスティク(ゲルマン学)、哲学を学び、イギリス神秘主義詩人を研究するとともに、インドの神秘説に多大な影響を受け、これが彼の全思索の根幹をなすに至った。そこからカスナーの観相学が成立するが、それは直観と想像力によって内部と外部との一致をみたとき、全一の顔の世界が現れるというのであって、要するに純粋な存在論である。だが神人を否定しなかったことから、倫理的な色彩を帯びている。最後には日本の禅に到達して終わっている。著述は『メランコリア』(1908)、『神話の創造力』(1928)、『観相学』(1932)など数多いが、観相学の難解なるゆえにあまり読まれていない。彼の存命中もっともよく理解しあえたのは、詩人のリルケだけであった。
[塚越 敏 2015年2月17日]
『塚越敏訳『メランコリア』(1970・法政大学出版局)』