小正月(1月14~16日)の呪的(じゅてき)訪問者。「なまはげ」「ほとほと」など一連の行事を、東北地方と九州南部でこうよぶ。小正月の夜、藁(わら)の腰巻や蓑(みの)を着て変装した男たちが、ざるなどを持って家々を回って米や餅(もち)や銭の祝儀をもらい歩く。村の青少年の場合と、よそからくる物もらいの場合と、厄年の者が厄払いの目的でする場合とがある。「かせどり」というのは、農作業の名称からきた語と思われるが、稼ぎ鶏(どり)または稼ぎ取りの意と解する者も多く、家々の軒下でニワトリの鳴きまねをしたり、集団同士で、もらった餅を取り合う所もあった。
[井之口章次]
仮面・仮装の異形の姿をした者を「来訪神」とした行事が各地域で伝承されており、2018年(平成30)、小正月などに行われる来訪神行事10件が、「来訪神:仮面・仮装の神々」として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に一括登録された。
[編集部 2019年3月20日]
…たとえばまぶたに生ずるはれものをモノモライとかメボイト,メコジキなどこじきを意味することばで呼ぶのは,近所の家々をまわって障子の穴から手をさし出し,すこしずつ食物をもらい歩いて食べるとよいなどという民間療法からきている。そのほか八月十五夜の月見のだんごを盗んで食うと健康になるというのはよく知られた風であるし,小正月のころ若者や子どもたちがわざとこじきのなりをして家々から金品や食物をもらい歩く,カセドリとかコトコトなどと呼ばれる習俗もかつては全国に分布していた。これは食物をともにすることにより,多くの人々と力をあわせ,より健康な生活をおくることができると信じた心意にもとづく慣行だと考えられている。…
…来訪神の第3の形態は,仮面仮装の形はとらないが,子どもたちが来訪して来る形態をとるものである。これには東北地方のカセドリ,スルメツリ,中国地方のホトホト,コトコト,鹿児島のカセダウチなどがある。この形態においては子どもたちは組をなして,村中の各家を訪問し,大判・小判やわら馬などを各家に置いたあと,餅や菓子,金などを各家からもらうことが多い。…
※「かせどり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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