改訂新版 世界大百科事典 「カタリナ修道院」の意味・わかりやすい解説
カタリナ修道院 (カタリナしゅうどういん)
シナイ半島南部ムーサー山(聖書のシナイ山)の北の山麓にある修道院。527年にビザンティン皇帝ユスティニアヌス1世によって建立された。名称は,4世紀初頭にアレクサンドリアで殉教したという聖女カタリナに由来する。後代の伝説によればカタリナの遺体は天使によってシナイ山に運ばれたという。この修道院は東方正教会に属すが,管轄の点ではアレクサンドリア総主教からもエルサレム総主教からも独立しており,1575年以来,修道院長を首長(大主教)とするシナイ教会を形成している。カタリナ修道院は多数の古写本,典礼芸術作品を伝えている。例えばビザンティン帝国8世紀のイコノクラスムが及ばなかったため,イコノクラスム期以前のイコンが残っており,美術史上貴重な資料とされる。また1844年にこの修道院でティッシェンドルフK.von Tischendorfによって発見された聖書の写本《シナイ写本》はその後の聖書の校訂に大きな寄与をなした。
執筆者:森安 達也
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