カネ余り(読み)かねあまり(その他表記)excessive liquidity

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カネ余り」の意味・わかりやすい解説

カネ余り
かねあまり
excessive liquidity

流動性の高い通貨などの資産の供給量が需要量を上回る状態をさす。過剰流動性ともよばれる。経済活動が過熱気味となり、インフレーションの原因となるほか、余った通貨など資産が株式市場に流れ込み株高を招くことが多い。金融業務とは関係の薄い一般企業(ノンバンク)も貸出しに乗り出すことで地価高騰を招くほか、企業のM&A(買収合併)が活発になる。

 日本は高度成長期以降、二度の大きなカネ余りを経験した。1971年(昭和46)、当時のアメリカ大統領ニクソンがドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」後、日本銀行利下げと資金供給拡大、首相田中角栄の日本列島改造論に乗った開発ブームが重なり、株高とインフレを招いた。1990年代初頭の日本のバブル経済も、1985年にドル高是正で先進5か国が合意した「プラザ合意」後のカネ余りが招いたとの見方が一般的だ。

 一般にカネ余りになると、中央銀行は金融政策を引き締め、過剰流動性を吸収するとされる。ただ通貨供給量、名目国内総生産(GDP)、地価動向など数多くの指標を参考に景気動向をみながら判断する必要があり、金融政策がうまく機能しないことも多い。バブル経済崩壊後、日本が1990年代後半からとった超低金利政策が、世界的なカネ余りを招き、これがアメリカのサブプライムローン問題遠因になったとの指摘もある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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