バンク(銀行)の特徴は預貯金業務と貸出業務を同時に行うとともに、為替(かわせ)業務をも扱うところにあるとされているが、預貯金業務をもたずに貸出業務(信用供与)のみを行うものをノンバンクと称している。アメリカなどではノンバンクバンクとよばれている。
ノンバンクは預貯金業務がないため、資金調達は系列の銀行や他の金融機関からの借入金や長・短証券の発行によっている。日本についてみれば、「貸金業法」(旧、貸金業規制法)に基づいて設立された各種金融機関(具体的には、消費者向け貸金業者、信販会社、クレジットカード会社、リース会社、ベンチャー・キャピタルなど)があげられる。ノンバンクによる金融業務が急拡大したのは、1980年代以降である。その背景には、業務運営面での自由度が銀行などに比べて高かったうえに、銀行などが本業の付随業務として積極化させたからである。なかでも、とくに不動産にかかわる貸出業務を行っている会社が多く、そのため、いわゆるバブル経済のもとでは親銀行のノンバンクを通しての不動産や株式の投機をあおるような貸出が盛行した。このことは地価や株価を投機的に上昇させる役割を果たすことになり、社会の批判を浴び、金融システムの安定性を揺るがす原因にもなった。そこで政府は、バブル崩壊の過程で、過度の不動産関連融資などを抑制する措置をとった。また、1990年代なかば以降、大量の不良資産で苦しんでいた住宅金融専門会社の処理に政府は総額6800億円の公的資金を投入した。
さらに政府は、ノンバンクの健全な育成を通じて、金融システムの安定性を回復することに努め、その経営指導や経営内容の検査を通じてのノンバンク経営正常化を促す政策を採用した。具体的には、従来、ノンバンクには「出資法」上の上限金利(年利29.2%)があったが、これを2006年(平成18)に法改正し、「利息制限法」の上限金利(年利15~20%)に引き下げたことなどである(施行は2010年6月)。今後は健全経営を確立したノンバンクを中心に、さらなる機能の拡充が期待されている。
[原 司郎・北井 修]
『呉文二・島村高嘉・中島真志著『読本シリーズ 金融読本』第26版(2007・東洋経済新報社)』
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