改訂新版 世界大百科事典 「カノン法大全」の意味・わかりやすい解説
カノン法大全 (カノンほうたいぜん)
Corpus juris canonici[ラテン]
中世ヨーロッパにおいてローマ法大全と並ぶ重要な地位を占めた教会法集成。教会法大全と呼ばれることもある。12世紀中葉から15世紀中葉ごろまでに編纂された6編の法典・法令集からなっている。(1)グラティアヌス教令集(1140ころ),(2)グレゴリウス9世教皇令集Decretales Gregorii PPIX(通称リベル・エクストラLiber extra,法典。1234),(3)第六書Liber sextus(法典。1298),(4)クレメンス集Clementinae(法典。1317),(5)教皇ヨハネス22世追加教皇令集Extravagantes Johannis PP ⅩⅩⅡ,(6)普通追加教皇令集Extravagantes communes。これら6編の法典・法令集が公式にカノン法大全と呼ばれるようになったのは1580年以後のことであるが,グレゴリウス9世教皇令集以下の5編は,いずれも既存の法令集または法典に追加して一体corpusとなす目的で編纂されており,カノン法大全の名称自体は,すでに14世紀中から用いられていた。カノン法大全中の法は,カトリック教会においては旧教会法典の施行時(1918)まで現行法の効力を保持し,初期のプロテスタント諸教会においても重要な教会法源と認められた。また,カノン法大全の法は,ローマ法大全のそれと共に,中世ヨーロッパの普通法jus communeを形成し,ヨーロッパ大陸諸国に継受されて,これらの国々の法発展を基礎づけた。
執筆者:淵 倫彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報