一般法lex generalisと同義語で,特別法と対置して用いられる。中世後期以降のヨーロッパの法発展において特別の役割を担った概念である。12世紀ボローニャに成立したローマ法学はやがてヨーロッパ各地に伝播し,それとともに大学で専門教育を受けた学識法律家身分(法曹)の形成をもたらした(イングランドでは異なった発展をたどる)。彼らは大学で学んだローマ・カノン法を実務でも適用するにいたるのであるが,その際よりどころとなったのが普通法の理論である。これはイタリアのとりわけ注解学派によって基礎づけられたもので,《ローマ法大全》は書かれた理性ratio scriptaとして〈すべての人々に共通の〉法,普通法であり,局地的な制定法規や慣習法によって解決が与えられていない法律問題が現れる場合には,いつでも補充的に通用力を要求しうるという独特の法源理論である。この普通法の内容は法学によって,すなわち《ローマ法大全》の解釈活動を通じて絶えず発展させられていき,また適用にあたって疑問があるときは〈博士たちの共通意見〉,つまり学者たちの通説(たいていフランス人かイタリア人の著名な著作者のうち多数がとる見解)によるという規則が妥当した。このようなヨーロッパ大陸に共通の普通法の伝統は近世においても維持されるが,君主制国家の確立に伴い,しだいに自国の法や判決を組み込んだ〈国別の〉普通法ともいうべきものが形成されてくる。
→ドイツ普通法
執筆者:佐々木 有司
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… この学派は,13世紀前半南フランスで独自の発達をみたローマ法研究の新しい方向を導入したキヌスCinus de Pistoia(1270ころ‐1336)を準備者としながら,バルトルスとその弟子バルドゥスBaldus de Ubaldis(1327‐1400)によって確立され,同時にその学問的頂点に達している。彼らはイタリア諸都市で現実に通用する条例や慣習をも理論的に法として承認し,これらの特別法に対し補充的通用力を有する普通法jus communeがローマ法(およびカノン法)であるとした。こうして種々の特別法源が学問的な解釈・論証方法の支配下におかれるとともに,ローマ法大全の諸法文がきわめて可動的な,大胆な類推により一般化するしかたで実生活に適合させられていった。…
…したがって,新たに獲得されたそのような優位性を保持・強化するために,法律学・法実務の分野で,かつて大学で学びいまや〈共通の学識の基礎〉ともなったローマ法の原則へと法律家が立ち戻り,ローマ法大全の権威に依拠しようとしたのはある意味で当然のことであった。そしてこのような〈学識法曹階層〉の出現と彼らに担われた学識法の社会的浸透は,〈普通法〉の成立という事態をもたらし,その後のドイツの法発展を決定づけたのであった。 ローマ法の継受の結果,ドイツの法生活はローマ法を基礎とするようになったのであるが,その妥当を担保する統一的な政治的権威や近代的な意味での中央裁判所が存在していなかったために,それはもっぱら学問的権威によって担保され,〈書かれた理性〉として妥当したにすぎなかったのである。…
…近世以降,パンデクテンを基礎として発展した現代の法という意味で,〈パンデクテン法Pandektenrecht〉の語が用いられた。
[パンデクテンの現代的慣用]
ドイツにおける〈ローマ法の継受〉が本格的に進行するのは15世紀中葉以降のことであるが,継受されたローマ法(中世イタリア法学によって学問的に加工された形でのローマ法大全)は普通法Gemeines Recht,すなわちドイツの全領域に共通の法として通用することになった。その後17世紀から18世紀にかけて,とくに私法の分野で〈パンデクテンの現代的慣用Usus modernus pandectarum〉を主要任務とするドイツ普通法学の展開をみた。…
※「普通法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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