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教会法 きょうかいほうjus canonicum; canon law

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

教会法
きょうかいほう
jus canonicum; canon law

カトリック教会およびイギリス国教会における信徒団体の生活を規律するために,神と教会から発布された権威的規範の総体として発達した法体系。聖書,教皇令,公会議令そして伝承や慣習を法源とする。教会法は 1141年頃,「グラチアヌス法令集」として初めて体系づけられ,その後 12~13世紀の教皇たちがその英知を傾けて集大成化に努力し,1582年の『教会法大全』の成立によってほぼ実質的に完成した。教会法は国家という枠とは次元を異にする全世界にまたがる普遍的な信徒団体の法として,特殊的な封建法に対しローマ法とともにヨーロッパ全体を支配した。教会は近代法,とりわけ婚姻法,離婚法,相続法の領域の形成に実質的な貢献を行なっている (カノン法) 。

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デジタル大辞泉の解説

きょうかい‐ほう〔ケウクワイハフ〕【教会法】

キリスト教会が、教徒の信仰・生活や教会の組織・活動を規律するために、独自に定める法体系。→カノン法

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世界大百科事典 第2版の解説

きょうかいほう【教会法 jus ecclesiasticum[ラテン]】

キリスト教会の組織や活動を規律する法を教会法という。教会法は,キリスト教会の典礼または教派の別に従って,ローマ・カトリック教会法,ギリシア正教会法,ドイツ福音主義教会法,英国国教会法,改革派教会法などに区分され,法定立の主体の別に応じて,狭義の教会法(神または教会が定立した法),国家教会法(国またはこれに準ずる団体が教会に関して定立した法)およびコンコルダート(政教条約。教会と国家の間の条約)に区分される。

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大辞林 第三版の解説

きょうかいほう【教会法】

キリスト教、特にカトリック教会などで、信仰生活を律し組織を運営するために定められた法律・規則。カノン。
国家が宗教の地位・権限を定めた法律。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

教会法
きょうかいほう
ius ecclesiasticumラテン語

キリスト教信徒集団の信仰および生活の規範や、その機構、運営、活動行政にかかわる法体系をさす。古くは、広く「カノン法」ius canonicumともよばれてきた。カノンは、使徒パウロが用いた「おしえ」(「ガラテヤ書」6章6)と語源をともにする。『新約聖書』のなかに、すでに使徒たちによって集収された一連の「おしえ」をみることができるように、キリスト教会では、初期より、信仰の根本問題や信徒の守るべき生活規律について、また一般宗教的慣習について、異なる意見の調整を図り、その問題解決のために教会会議が開かれ、会議の名において、つまり当時の教会立法機関によって決議がなされたり、教会の権威者、すなわち教皇や司教から教令が出されたりして、これらが教会法を構成していった。カルケドン公会議(451)において「アンティオキア法令」が引照された事実が示すように、5世紀にはすでに「教会法令集」が存在していたが、12世紀に至って教会法の体系化は画期的に行われた。
 法源による分類によれば、教会法でもっとも重要なものは神のことばによる「神法(しんぽう)」ius divinumで、この神法を前提とし出発点にして、「人定法(じんていほう)」ius humanumが教会の立法機関によって制定された。これが狭義の教会法で、さらに成文法と不文法に分けられる。[石田順朗]

教派と教会法

教会法は、主として、ローマ・カトリック教会とイギリス国教会(イングランド教会)や東方正教会によって重視され、遵法されてきた。なかでも重要なのは「ローマ・カトリック教会法」である。事実、カトリック教会では、2414の法令を含む『ローマ教会法典』Codex Iuris Canonici(1917年公布、翌年施行)をさして教会法とよんでいる。それは、総則、人、物、訴訟、犯罪、刑罰の5編に及ぶ広範囲にわたるものであり、その機能は、後世、国家法に属する私法、刑法、訴訟法などとは区別されていて、教皇や公会議などの権威によって公認された「カノン法」として、教会の基本的特質の表明であると認められてきた。
 しかし、教会法は、それ自体を目的にするものではなく、教会のよって目標とすることのために必要な手段と考えられていて、それは、法と教会の教義および道徳神学とが密接不可分に結合していることでもわかる。ローマ・カトリック教会では、教会法の制定とその執行を、一般世俗の権力から独立して、教会内部で行い、教会の独自な立法・行政・司法組織を確立していて、その点では、一般プロテスタント教会における教会法概念と相違する。[石田順朗]

教会法と国家法

教会法と一般国家法との関連性については、プロテスタントの諸教会間で、長年、論議されてきているが、そこでは、教会法の独自性を認めながらも、究極的には、一般の法観念から逸脱することはできないとして、いわば、緊張関係を保つというのが大勢の意向である。
 ただ、国家法から区別されたものとして教会法をとらえる立場でも、教会が法的秩序を欠いたままでよいというのではなくして、教会の法的秩序はあくまで神の意志に根ざすものであり、聖書がいわば根本法であると理解する限りでは、広く同調点がみられる。したがって、「信仰告白的文書」にしても法的原則を含み、教会の「憲法規則」も、教会法を一般法体系にのっとって成文化したものと考えられる。ともあれ、共通に表明されるところは、教会法では、体刑や極刑はもとより、自由刑や罰金刑が、希少例を除いて、ないかわりに、「説得の方法」を特徴としている。しかも、この説得方策こそ、刑罰を伴う国家法にまさって、適切有効であるとし、教会法が、キリスト教界独自の法として考えられるほかに、近代法思考の基盤となり、世界諸国の国家法や国際法へも大きな影響を及ぼしていることは、奴隷制度の廃止、婦女の法的地位の向上、婚姻制度の強化、刑罰制度の人道化、国際紛争の平和的解決方法の樹立などと、数多い事例にみられるところである。[石田順朗]

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