日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラティアヌス教令集」の意味・わかりやすい解説
グラティアヌス教令集
ぐらてぃあぬすきょうれいしゅう
Decretum Gratiani ラテン語
ローマ・カトリック教会の教会法典成立史上もっとも画期的な法令集。その著者は、教会法学の祖、カマルドール会士で、ボローニャの聖フェリックス修道院で教会法を教えたグラティアヌス(?―1158)で、1140年ごろ、それ以前の教会会議の決議や教皇の教令などの雑然としていた教会法の資料を、広く集めて整理し、説明を加え、また相互の調和を図り、3篇(ぺん)にまとめた。そして『教会法矛盾条令義解類集』Concordantia Discordantium Canonumとよんだ。本書は内容的に傑出していたので、教会法の教科書として広く使用され、中世を通じてもっとも権威ある教令集とみなされた。教会法の集大成である『教会法典』(旧)Corpus Iuris Canoniciが公にされる(1582)と、その第1部として集録された。
[小笠原政敏]