ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーワン」の意味・わかりやすい解説
カーワン
Kirwan, Richard
[没]1812.6.1. ダブリン
アイルランドの化学者,気象学者。大地主の子として生れたが,カトリックであったため,大学はフランスのポアティエ。卒業後イエズス会の修道士 (1754) 。のち帰国して一時ロンドンで弁護士。王立アイルランド・アカデミー創立に参加。のち同会長 (99) 。またロンドン・ロイヤル・ソサエティ会員 (80) 。イギリス人としては数少い,化学親和力の定量化の研究に従事し,その過程で化学当量の基礎的計算法を確立,J.リヒターの相互比例の法則の定式化を準備した。これによりコプリー・メダル受賞。主著『フロギストン論』 Essay on Phlogiston (87) は,A.ラボアジエの新燃焼理論に対して伝統的な立場を擁護するために書かれた。ラボアジエ自身はこれを夫人に仏訳させて,大規模な反論を展開した話は有名。のちカーワンは自説撤回 (91) 。また J.ハットンの地質学理論にも反論を唱えるなど,保守的な面が伝えられているが,鉱物学,気象学,化学産業の分野で重要な業績を上げ,当時のヨーロッパ科学界に大きな影響を与えた。
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