改訂新版 世界大百科事典 「キャプテンシステム」の意味・わかりやすい解説
キャプテン・システム
CAPTAIN System
1970年代から80年代にかけて世界の先進産業国が競って開発・導入を図ったビデオテックスvideotexと総称される家庭向け情報システムの,日本での開発名称。正式日本名は文字図形情報ネットワーク・システムで,その英訳語Character And Pattern Telephone Access Information Systemの頭文字を綴った呼称。ビデオテックスの基本的な仕組みは,テレビ受像機を家庭内端末とし,これを付加装置と電話回線を介してセンター・コンピューターに接続し,情報提供サービスやテレショッピング,テレバンキングといったトランザクション・サービス,電子メール・サービスを提供するというもので,日本のキャプテン・システムは,文字情報のみを表示できる欧米のそれと異なり図形も表示できることが特色とされた。ビデオテックス開発のパイオニアはイギリスで,郵便電気通信公社が1976年から実験サービスを開始し,早くも79年3月にはプレステルの名称で商用化している。これに刺激されて,西ドイツはビルトシルムテキストを,フランスはテレテルをそれぞれ開発している。
日本における開発実験は,郵政省,電電公社(現NTT),キャプテン・システム開発研究所が協力して1979年から83年まで進められ,新聞,出版,広告,金融機関,デパート等の企業がキャプテン・システムの普及により業態の面で大きな影響を受けるとの判断からこの実験に参加した。日本でのビデオテックス商用サービスは84年に開始された。商用化当初は,おりからの地域情報化の高まりのなかで全国各地において〈地域キャプテン〉として導入されるなど普及の努力が続けられた。しかし,表示文字数や伝送スピード等機能面での限界が大きかったこと,付加装置の価格や利用料金,さらには提供される諸サービスが受け入れられなかったことから,全国の普及端末総数はピーク時でも20万をこえることはなく,パソコン通信やインターネットが普及しつつある90年代後半の時点で,すでにメディアとしての終息期に入りつつある。
執筆者:小松崎 清介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報